バングラデシュの思考
9月3日、バングラデシュの私立大学Northern Universityの客員教授としてはじめての講義をダッカのキャンパスで行った。
Northern Universityからは社会人を含むMBAの学生が20数名、日本からは私が塾長を務める適十塾の学部生4名が参加した。
講義内容は、SONYのHistory & Storyを学び、ブランド・ビルディングという観点から、バングラデシュで急速に成長している現地の電機メーカーWALTONの将来像を考えようというもの。
日本での講義と同じようにディスカッションを重視したプログラムを準備し講義に臨んだが、日本の講義とは若干勝手が違ったようだ。
バングラデシュの学生はとにかく、前のめりで野心的だ。「WALTONをブランド化する為には、とにかくSONYと提携すべきだ」と、いきなり説きまくる。
ここ数年5%以上の経済成長を続け、日本を上回る1.6億人の人口を有するバングラデシュ経済は、今後間違いなく発展していくのだから、いうのが彼らの唯一のロジックで、
論理よりも「提携すべき」という、あるべき論に基づく発言が印象的だった。
時間内では細かいことは話し合えなかったが、データ等の根拠の提示よりも、「どうしたいのか」という結論ありきの姿勢がとても興味深かった。
逆に日本の講義では、データや論理等の根拠を一通り集めてから結論を導き出す学生(特に大学院生)が多いが、バングラデシュでは真逆との印象を持った。
日本ではBOPビジネスやビジネスプランの講義において、根拠を詰める前に、「本当にやりたいことは何か」を突き詰めるよう指導しているが、今後、バングラデシュでの講義では、「もう少し根拠を踏まえて考えよう」と指導することになりそうだ。
実はこれと全く同じことが、企業にも当てはまる。
・石橋を叩いて、叩いて渡らない日本企業と、
・石橋を叩かず、まずは渡ってみようとするバングラデシュ企業
この違いの調整役が、私たちの役割なのかも知れない。
「論理は人を説得する材料になるかも知れないが、自分の本当の気持ちは情熱に宿る」
これは、立教大学の全学共通カリキュラム「新時代の企業経営〜企業と社会との関係性を考える」の最後の講義で学生に話したことであるが、「論理」と「情熱」のバランスや、さじ加減を日本、バングラデシュ両国で教鞭をとり、事業支援を実践しながら学べることが、今後益々楽しみになった。
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