思考の導線
大学での講義や、学生と雑談をする中でいつも感じることは、同じものを見たときの「思考の導線」が、我々の世代と明らかに違うということだ。例えば、アルコール飲料の捉え方もそうだ。
アルコール飲料と言えば、我々の世代はまずビールを思い浮かべる。日本酒、焼酎もあるかも知れないけど「とりあえずビール」だろう。「ワイン???」でも、これは最近になってからのことで、僕らが学生のころにワインを嗜むやつはいなかった。学生時代は、とりあえずビール、それからサワー系、酒に強いやつや体育会系は日本酒みたいな感じだったように思う。その後、社会人になってから焼酎を覚え、ワインを嗜むようになり、外ではビール、家では発泡酒、第三のビール、CMの影響でハイボールみたいな感じで徐々にアルコール飲料の選択肢が増えていった。コンビニやスーパーのアルコール飲料の棚前で、それぞれの商品の歴史や、値段と味のバランスみたいなものを考えながら商品を選ぶ、我々の世代はそんな感じだろう。
一方、今の学生はアルコール飲料の歴史も味もよくわからないまま、多品種のアルコール飲料の棚前に立つ。何を買うかのポイントは、CMのイメージ(音楽や色)、親の影響など様々であるが、アルコール離れといわれる世代ゆえ、細かい拘りはなく、何よりもコスパ重視との意見を耳にする。また、男女を問わず、あまり酔いたくないからいう理由で、アルコール度数の低い酒をTPOに合わせて選ぶという話も聞く。そこには我々世代のように、味の基準をビールに置き、そこから発泡酒、第三のビールをイメージしたり、味と価格のバランスで商品を選択するという思考の導線はなく、全てのアルコール飲料が同一線上にあるという、明らかに我々の世代とは違う思考の導線があるのだ。
彼らが生まれた時には、既にソ連もベルリンの壁もなかったのだから、思考の導線の違いは当たり前と言えば当たり前のことかも知れないが、そのことをしっかり理解している大人はまだまだ少ないだろう。マーケティングのヒントは、こんなところにもある。
アイキャッチ画像:http://www.skyseeker.net/
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